第1章 量子力学の始まり

物理学

 開始早々身も蓋も無いことを言うが、量子力学は間違った理論と言える。

 その理由を述べると、相対論的効果を考慮せず、場の励起状態ではなく波束を粒子と考える点などがある。

 しかしながら、量子力学はエネルギー領域の低い我々の身近な所で、多くの物理現象を予言することの可能な低エネルギー有効理論である。

 これを学ぶことで量子論の基本的な方向性が見えてくると思う。

 それでは、量子論の世界へようこそ(*’ω’*)。

階層性構造

 本来後々学ぶことではあるが、量子について理解する上で役に立つと考え、まずは階層性構造と言うものに軽く触れたいと思う。

 階層性構造とは、大きさ、つまりスケールによって起こる物理現象が異なると言う主張である。スケールについて少し具体例を述べると、25mプールであれば10^1mスケールの話であり、原子や分子であれば10^-10mのスケールとなる。ここでは詳しく触れないが、なんとなく対象となる物理現象が異なりそうだと感じてもらえれば良いかと思う。

 それで、スケールにより起こる物理現象が階層的に異なりそうとの事で、その終着点で最も物理的に意味のある最小のスケールはどんなものか?と言う話が重要となる。

 それらの詳しい説明は繰り込みでミクロ構造の議論を先延ばしにするかの如く後回しにするとして、階層性構造の底にあるのがプランクスケールだと言う事を意識してもらいたい。

 プランクスケールとは、10^-35mのプランク長と言うサイズの空間や、それに準ずるエネルギー、時間など、物理的に意味のある下限の値である。例えば、プランク長より小さい空間は存在せず、もはや有るか無いかのどちらかしかない領域である。

量子とは?

 まず、事の始まりはマックス・プランク氏の指摘で、光のエネルギーは、

$$E=nhν\qquad(1)$$

の様に離散的(飛び飛び)な値を取ると言う内容だ。ここで、nを正の整数、h[J・s]をプランク定数、ν[1/s]を光の振動数とする。

 つまり、光はhνと言うプランクスケール的に存在可能な最低限のエネルギーがn個集まった状態と解釈できる。その意味のある最低限のエネルギーhνを量子と言う。

図1 集団的な量子のイメージ

 イメージ的に、エネルギーと言う概念は、量子と言うブロックの集合体で構成されたものと考えておいても良いかもしれない。エネルギーは量子を1つ2つと数え上げるため、飛び飛びの離散的な値となる。

光電効果

 従来より、光は質量の存在しないただの波だと考えられて来た。物質は質量があるもので、また光のエネルギーは振動数に比例すると言う事実から、そう考えるのは自然な流れに思える。

 しかしながら、光電効果と呼ばれる金属に光を当てると電子が飛び出す現象が発見されることとなる。この光電効果の驚く点は、質量の無い波であるはずの光が、物質であるはずの電子を弾き出したと言う当時の常識からは外れたものである。

 そこで、これをどの様に解釈すれば良いかと言うと、光が運動量を持つ粒子として金属に衝突し、同等の運動量を持つ電子を放出したと言う事である。つまり、光は波であるにも関わらず、運動量を持つ物質としての性質も持つのではないかと言う可能性を示したのである。

図2 金属における光電効果

光の二重性

 実際、他の実験からも光が物質としての振る舞いをする現象が確認されている。その事実が正しいのであれば、光は波であり物質でもあると考えられる。この光が波動性と物質性を持つことを光の二重性(デュアリティ)と言う。

ド・ブロイの予想

 それならば、物質であるはずの電子は波の性質を持つ可能性があるのではないか?と言う疑問が浮かぶのではないかと思う。

 そこで、ド・ブロイ氏は、光が二重性をもつならば、今まで粒子と考えられて来たものも、波としての性質を持つのではないか?と主張した。

 そして、その様な物質の波としての性質を物質波と定義した。

二重スリットの実験

 電子の二重性の検証方法として、二重スリットの実験がある。光の干渉などの現象は、聞いたことがある方も多いと思われる。

 二重スリットの実験について嚙み砕いて説明すると、2つの隙間(スリット)にレーザー光を通すと、光がスリットの後ろに回り込むように広がる回析と言う現象が起き、2つのスリットから照射された光が干渉することで強め合う点と弱め合う点ができ、スリットの後ろに置かれたスクリーンに干渉縞ができると言うのもだ。

 そこで光の粒の代わりに、電子をスリットに向けて照射すると、干渉縞が観測されるのである。よって、電子も波動性を持つと言うド・ブロイの予想が検証されたため、電子も物質であり、波でもあると考えることができる。

まとめ

 光と電子は共に、物質でもあり波でもあると言う二重性を持ち、その粒子1つのエネルギーは量子の数で大きさを表現できる。

 そして、原子などの性質に対して力学的解釈を行おうとした際に不可能な現象が多々ある。つまり、原子や分子などの領域では階層的に仕組みが異なっていると考えられる。そこで、このミクロスケールの領域では、物質を波と解釈した離散的な力学を構築する必要がある。そのミクロスケールの力学を量子力学と言う。

 今回はここまでとして、次回はシュレディンガー方程式について話したいと思います。

 それではまた!!

第2章 シュレディンガー方程式 物理学入門

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