第6章 変数分離法

物理学

 波動関数の様にxとtの独立した二変数関数を持つ場合、波動関数をxとtの独立した変数を持つ固有関数の積として考えることができる。この手法を変数分離法と言う。

変数分離

 具体的に、位置に依存する関数をX、時間に依存する関数をTとして、一次元の波動関数に変数分離法を用いると、

$$\Psi\left(x,t\right)=X\left(x\right)T\left(t\right)\qquad(1)$$

となる。この手法の本質は、expの数学的な性質を利用したものである。これにより、シュレディンガー方程式をxとtのそれぞれのパラメータに従う固有関数へ分離して考えることが可能となる。実際に、(1)をシュレディンガー方程式に代入して整理すると、

$$iħ\frac{1}{T(t)}\frac{∂T(t)}{∂t}=-\frac{ħ^2}{2m}\frac{1}{X(x)}\frac{∂^2X(x)}{∂x^2}+V(x)\qquad(2)$$

となる。左辺は時間成分、右辺は位置成分の式になるように工夫した。このとき、ポテンシャルVはエネルギーの次元を持つため、そのエネルギー固有値をEとして導入すると、

$$iħ\frac{1}{T(t)}\frac{∂T(t)}{∂t}=E\qquad(3)$$

$$-\frac{ħ^2}{2m}\frac{1}{X(x)}\frac{∂^2X(x)}{∂x^2}+V(x)=E\qquad(4)$$

となり、時間に関するシュレディンガー方程式と、位置に関するシュレディンガー方程式を独立に考えることが可能となる。

時間に依存するシュレディンガー方程式

 まず、時間に関するシュレディンガー方程式の一般解を導出するため、(3)の微分方程式について定積分を行うと、

$$iħ\int_{0}^{T} \frac{1}{T(t)}dT(t)=\int_{0}^{t} Edt$$

$$ln{T\left(t\right)}=-\frac{iEt}{ħ}$$

$$\ T\left(t\right)=e^{-\frac{iEt}{ħ}}\qquad(5)$$

となり、固有関数Tが求められた。

位置に依存するシュレディンガー方程式

 また、(4)を整理すると、

$$-\frac{ħ^2}{2m}\frac{∂^2X(x)}{∂x^2}+V(x)X(x)=EX(x)$$

$$\frac{\partial^2X\left(x\right)}{\partial\ x^2}=-\left(\frac{ħ^2}{2m}E-V(x)\right)X(x)\qquad(6)$$

となり、(6)の微分方程式を解けば位置に関するシュレディンガー方程式の一般解が求められる。ここで、固有関数の形をX=e^axと仮定する。また、固有エネルギーEとポテンシャルエネルギーVの大小について場合分けをする必要がある。よって、

 (ⅰ) E>Vのとき、

$$k^2=\frac{2m(E-V(x))}{ħ^2}\qquad(7)$$

とすると、固有エネルギーが大きい場合の解は、

$$X\left(x\right)=Ae^{ikx}+Be^{-ikx}\qquad(8)$$

となりる。

 (ⅱ) E<Vのとき、

$$\rho^2=\frac{2m(V(x)-E)}{ħ^2}\qquad(9)$$

とすると、ポテンシャルの方が大きい場合の解は、

$$X\left(x\right)=Ce^{\rho\ x}+De^{-\rho\ x}\qquad(10)$$

となる。

定常状態

 現段階では固有エネルギーEの値は具体的に定まっていない。Eを求める場合は境界条件を用いて計算する必要がある。それを踏まえて、Eが定まった場合を仮定して、以上の結果を(1)に代入すると、

$$\Psi\left(x,t\right)=X\left(x\right)e^{-\frac{iEt}{ħ}}\qquad(11)$$

となり、(11)は定常解と呼ばれる。

まとめ

 シュレディンガー方程式を時間と位置に関する2つの固有関数に分解し、それらの解の形を求めることができた。また、位置に関するシュレディンガー方程式に境界条件を課すことで、エネルギー固有値Eが定まり、その結果離散的な定常状態が求まる。

第5章 不確定性原理 第7章 井戸型ポテンシャル 物理学入門

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