第3章 確率解釈

物理学

 前回の議論では、波動関数が従うシュレディンガー方程式を導出しました。

 さて、波動関数は理論の都合上、虚数を含む複素関数でした。しかしながら、実際に我々が観測できる位置や運動量等のパラメーターは、虚数では無く実数です。

 この問題をどう解釈について話したいと思います。

ボルンの確率解釈

 まず、複素数について絶対値を取ると、それは複素平面上の距離を意味するのだった。数学的な細かい説明を省いて結論を述べると、複素数の絶対値は乗法的ノルムである。ノルムとは、ベクトルの長さの概念の様なものである。

 また、複素数と複素共役の積は絶対値の2乗と等しいことが知られている。つまり複素関数である波動関数と、その複素共役の積は実数の値を取るはずである。ゆえに、

$$\left|\Psi\left(x,t\right)\right|^2={\Psi^*\left(x,t\right)}\Psi\left(x,t\right)\qquad(1)$$

となる。

 それでは、観測可能な実数の値を取るはずの(1)は、物理的にどんな意味を持つのだろうか?

 そこで、ボルン氏の実験結果によると、どうやら(1)は確率密度と解釈できるとの事らしい。

 いきなり確率が出て来てぱっとしないかも知れないが、例えば電子の位置の測定を10秒行うとして、AかBの2パターンの位置で観測できるとする。この時、AとBでそれぞれトータル5秒ずつ観測できるのならば、AとBで電子が検出される確率は5s/10s=1/2と解釈出来ると思われる。

 まとめると、量子力学では波動関数を用いて、電子がある位置に存在する確率を考える事ができる。ボルンの実験により、波動関数の絶対値の2乗は電子の確率密度と解釈される。

 では確率密度との事で、確率と解釈するためには1次元のため、観測できる微小区間(微小距離dx)を掛けてやればよい。

 そして、各微小区間で観測される確率を全て足し合わせた和が1になるように波動関数の係数を決定できれば、統計的な確率として実際の電子の位置を予言出来る。この全パターンの確率の合計が1になるように係数を調整する操作を規格化と言う。

 そして、結果的に和を積分と解釈すると、

$$\int{\left|\Psi\left(x,t\right)\right|^2dx}=1\qquad(2)$$

となり、(2)を満たせば規格化が完了したと言える。

期待値

 電子の位置情報を統計的な確率で解釈出来たと言うことは、位置やそれに連なる速度、運動量等の期待値を求める事が出来る。

 期待値とは、どのくらいの値が出るかの統計的な目安と考えると良いかもしれない。例えば、サイコロの期待値は(1+2+3+4+5+6)/6=3.5となる。1~2回とかであれば1や6の値が出たりするので3.5とはかけはなれている様に見えるかも知れないが、100回サイコロを振った場合の目の和はかなり350に近い値と成るだろう。そんな感じの概念である。

 では具体的に、期待値は値と確率を掛け、全パターンの和を取れば良いので、位置の場合は、

$$\begin{eqnarray*}\langle x \rangle&=&\int{x|Ψ(x,t)|^2dx}\\&=&\int{Ψ^*(x,t)xΨ(x,t)dx}\qquad(3)\end{eqnarray*}$$

となり、波動関数の形が分かる上で積分を実行すれば、具体的な位置の期待値が求められる。

 また、運動量の期待値は位置を時間微分し、シュレディンガー方程式を代入すると

$$\frac{d}{dt}\langle x \rangle=\frac{iħ}{2m}\int{(Ψ^*x(\frac{∂^2Ψ}{∂x^2})-(\frac{∂^2Ψ^*}{∂x^2})xΨ)dx}\qquad(4)$$

となる。さらに、部分積分し、整理すると、

$$m\frac{d}{dt}\langle x \rangle=\int{Ψ^*\frac{ħ}{i}\frac{∂Ψ}{∂x}dx}$$

$$\begin{eqnarray*}\langle p \rangle&=&\int{Ψ^*\frac{ħ}{i}\frac{∂Ψ}{∂x}dx}\\&=&\int{\Psi^\ast p}\Psi dx\qquad(5)\end{eqnarray*}$$

となる。

 よって、以上の結果より期待値を一般化すると、任意の物理量Oの期待値は、

$$\langle O \rangle=\int{Ψ^*O(x)Ψdx}\qquad(6)$$

となる。

まとめ

 以上より、波動関数を確率密度と解釈し、量子力学に確率の概念が導入された理由を説明した。その結果として、観測量の期待値も導入された。

 今回はここまでとして、次回は確率解釈について話したいと思います。

 それではまた!!

第2章 シュレディンガー方程式 第4章 演算子と交換関係 物理学入門

#量子力学 #確率解釈 #期待値 #ハミルトニアン #たくぶつり

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