関数と極限
関数の定義
1. 関数の基本的な定義
関数 f は、集合 A の各元に、集合 B の唯一の元を対応させる規則です。この対応関係を数式的に表すと、次のように書きます:
f: A → B
ここで、A は定義域(関数が入力として受け取る値の集合)、B は値域(関数が出力する値の集合)です。
- 定義域: 関数が入力として受け取る値の集合です。例えば、実数全体が定義域の場合もあれば、自然数や整数など、特定の数の集合も定義域として使います。
- 値域: 関数が出力する値の集合です。関数の定義により、定義域の各要素が値域の中のどの要素に対応するかが決まります。
関数 f において、x ∈ A の各元に対応する値 f(x) が一意に決まるとき、f(x) は関数の値と呼ばれます。
2. 関数の表現方法
関数を表現する方法にはいくつかの方法があります。具体的には、次のように関数を示すことができます。
- 式による定義: 関数を数式で表現します。例えば、次のように表される関数があります:
- グラフによる定義: 関数のグラフは、定義域の各元 x に対応する出力値 f(x) を視覚的に示します。例えば、関数
f(x) = x^2
の場合、グラフは放物線の形になります。 - 表による定義: 特定の定義域に対して、対応する関数の値を表として示す方法です。次のような表で関数を示すことができます:
3. 関数の例
次に、いくつかの代表的な関数の例を挙げます。
- 線形関数:
f(x) = ax + b
のように、一次関数は直線的な関数です。ここで a と b は定数です。 - 二次関数:
f(x) = ax² + bx + c
のように、二次関数は放物線の形をとります。 - 指数関数:
f(x) = a^x
のように、底が定数の指数関数は急速に増加または減少します。 - 三角関数:
f(x) = sin(x), cos(x)
のように、三角関数は周期的な性質を持っています。
4. 関数の性質
関数にはさまざまな性質があり、それらを利用して関数の特性を理解することができます。以下に代表的な性質を示します:
- 連続性: 関数が「途切れずに滑らかに変化する」性質を持っている場合、関数は連続であると言います。具体的には、関数の値が特定の点で途切れずに変化していることを示します。
- 可微分性: 関数が微小な変化に対してどれだけ速く変化するかを示す性質です。関数が微分可能であるためには、その点での接線が存在する必要があります。
- 単調性: 関数が増加または減少していく性質です。増加関数は、ある区間で常に値が大きくなり、減少関数は常に値が小さくなります。
5. 関数の逆関数
ある関数 f が、対応関係が一意で逆に対応できる場合、その逆関数 f-1 が存在します。例えば、関数 f(x) = x + 3
の逆関数は f-1(x) = x - 3
です。
逆関数は、元の関数によって与えられた出力値から入力値を「逆に求める」ための関数です。
6. 関数の実生活への応用
関数は、数学的な抽象概念であると同時に、実生活においても広く応用されています。例えば:
- 物理学: 運動の速さ、加速度、エネルギーなどはすべて関数で表されます。
- 経済学: 需要と供給の関係、利益の最大化問題などは関数としてモデル化できます。
- 統計学: 確率分布関数や統計的な分析にも関数が使用されます。
このように、関数は多くの分野で基礎的な道具として利用されています。
例題 1
関数 f(x) = 2x + 3
が与えられています。
問題1: f(4)
の値を求めなさい。
問題2: 関数 f(x) = 2x + 3
のグラフの傾きを求めなさい。
解答
問題1: f(4)
の値を求める
関数 f(x) = 2x + 3
が与えられています。この関数において、f(4)
を求めるには、x = 4
を代入すれば良いです。
f(4) = 2(4) + 3 = 8 + 3 = 11
したがって、f(4) = 11
です。
問題2: 関数のグラフの傾きを求める
関数 f(x) = 2x + 3
は一次関数です。一次関数のグラフは直線となり、その直線の傾きは関数の式の x
の係数(ここでは 2
)に対応します。
一次関数 f(x) = ax + b
の場合、a
が傾きです。この関数では a = 2
ですので、グラフの傾きは 2 です。
まとめ
1. f(4) = 11
2. グラフの傾きは 2
このように、関数 f(x) = 2x + 3
において、特定の x
の値に対する関数の値を求めたり、関数の式からグラフの傾きを求めることができます。
極限の概念
極限は、数学の中でも非常に重要な概念であり、特に解析学や微積分学の基礎を成すものです。極限の考え方を理解することは、連続性、微分、積分などの多くの数学的な手法の理解にも繋がります。
1. 極限の基本的な定義
極限は、ある関数が特定の点に近づくとき、その関数の値がどのように挙動するかを示すものです。簡単に言えば、「入力値がある点に近づくとき、出力値がどのように変化するか」を捉えるための数学的な手法です。
具体的には、関数 f(x) の極限とは、x がある値(例えば a)に近づくとき、f(x) がどの値に近づくかを示します。
極限を数式で表すと次のようになります:
limx→a f(x) = L
ここで、a は x の近づく点で、L はその点における関数の極限値です。この式は、「x が a に近づくとき、f(x) が L に近づく」と解釈します。
2. 極限の直感的な理解
極限の直感的な理解は、数値がどのように「近づく」かを考えることです。例えば、x が a に近づくときに、関数 f(x) がどのような挙動を示すのかを見ます。
例えば、関数 f(x) = 2x があるとします。この関数は直線的に増加します。x が 3 に近づくとき、f(x) はどのような値に近づくのでしょうか?
- 計算:
limx→3 2x = 2(3) = 6
この例では、x が 3 に近づくと、関数 f(x) = 2x は 6 に近づくことがわかります。このように、極限は関数の挙動を分析する手法として使われます。
3. 極限の重要な性質
極限にはいくつかの重要な性質があり、これらを利用することでより複雑な極限計算を行うことができます。
- 加法性:
limx→a [f(x) + g(x)] = limx→a f(x) + limx→a g(x)
- 積分性:
limx→a [f(x) * g(x)] = limx→a f(x) * limx→a g(x)
- 商の極限:
limx→a [f(x) / g(x)] = limx→a f(x) / limx→a g(x)
(ただし、limx→a g(x) ≠ 0)
これらの性質を利用することで、極限の計算が簡単になります。
4. 極限の具体的な計算例
次に、いくつかの具体的な例を見てみましょう。
- 例1:
limx→2 (x² - 4) / (x - 2)
この式を直接計算することはできませんが、式を簡単にしてから極限を取ることができます。まず、分子を因数分解します:
limx→2 (x² - 4) / (x - 2) = limx→2 [(x - 2)(x + 2)] / (x - 2)
分子と分母に共通の因子 (x – 2) があるので、これを約分して:
limx→2 (x + 2) = 4
したがって、limx→2 (x² - 4) / (x - 2) = 4
です。
- 例2:
limx→0 sin(x) / x
この極限は、x → 0 のときの三角関数の基本的な極限です。数学的には次のように計算できます:
limx→0 sin(x) / x = 1
この結果は、三角関数の極限として非常に重要なものです。
5. 極限の応用
極限の概念は、微積分学をはじめとするさまざまな数学分野で重要な役割を果たします。例えば:
- 微分: 微分は、ある点における関数の変化率を求めるために極限を用います。
- 積分: 積分は、面積を求めるために無限に小さな範囲を考え、その極限を取ることで求めます。
- 数列と級数: 数列の極限は、無限に続く数列がどの値に収束するかを示すために使用されます。
このように、極限は数学の基礎を支える非常に重要な概念です。
例題2
関数 f(x) が、x がある値 a に近づくときに、その関数 f(x) がどの値に近づくかを示すものが「極限」です。これを数式で表すと、次のように書きます:
limx→a f(x) = L
ここで、a はxが近づく点、L はその点における関数の極限値です。具体的には、xがaに近づくとき、関数の値f(x)がどの値Lに収束するかを示します。
2. 極限の計算例題
例題1: 基本的な極限計算
問題: limx→3 (2x + 1)
を求めなさい。
関数 f(x) = 2x + 1 は線形関数で、直線的に増加します。したがって、極限計算も直接行えます。
解答: この場合、x が 3 に近づくとき、関数の値はそのまま計算できます:
limx→3 (2x + 1) = 2(3) + 1 = 6 + 1 = 7
したがって、limx→3 (2x + 1) = 7
です。
例題2: 因数分解を使った極限計算
問題: limx→2 (x² - 4) / (x - 2)
を求めなさい。
この式をそのまま計算することはできませんが、因数分解を使うと計算が可能になります。
解答: 分子を因数分解してみましょう:
x² - 4 = (x - 2)(x + 2)
したがって、式は次のように変形されます:
limx→2 (x - 2)(x + 2) / (x - 2)
分子と分母に (x - 2)
が共通しているので、これを約分できます:
limx→2 (x + 2) = 2 + 2 = 4
したがって、limx→2 (x² - 4) / (x - 2) = 4
です。
例題3: 三角関数の極限
問題: limx→0 sin(x) / x
を求めなさい。
この極限は、三角関数の基本的な極限です。数学的に有名な極限であり、以下のように計算できます:
解答: limx→0 sin(x) / x = 1
この結果は、微積分学で非常に重要な定理であり、関数の微分を求める際にも利用されます。
例題4: 無限大への極限
問題: limx→∞ 1/x
を求めなさい。
ここでは、x が無限大に近づくとき、1/x がどのように挙動するかを考えます。
解答: limx→∞ 1/x = 0
したがって、x が無限大に近づくと、1/x は 0 に収束します。
例題5: 定義に基づく極限計算
問題: limx→1 (x³ - 1) / (x - 1)
を求めなさい。
この例では、関数 f(x) = (x³ – 1) / (x – 1) を計算します。直接計算するのが難しいため、因数分解を使います。
解答: 分子の三項式 x³ – 1 は次のように因数分解できます:
x³ - 1 = (x - 1)(x² + x + 1)
したがって、式は次のようになります:
limx→1 (x - 1)(x² + x + 1) / (x - 1)
再び、分子と分母に共通の因子 (x - 1)
があるので、これを約分します:
limx→1 (x² + x + 1) = 1² + 1 + 1 = 3
したがって、limx→1 (x³ - 1) / (x - 1) = 3
です。
3. 極限の性質
極限にはいくつかの基本的な性質があります。これらを利用することで、複雑な極限計算を簡単に行うことができます。
- 加法性:
limx→a [f(x) + g(x)] = limx→a f(x) + limx→a g(x)
- 積分性:
limx→a [f(x) * g(x)] = limx→a f(x) * limx→a g(x)
- 商の極限:
limx→a [f(x) / g(x)] = limx→a f(x) / limx→a g(x)
(ただし、limx→a g(x) ≠ 0)
4. 極限の応用
極限は、微積分学において非常に重要な役割を果たします。次のような応用があります:
- 微分: 関数の変化率を求めるために極限を使用します。
- 積分: 面積を求めるために極限を用いて無限に小さな区間を積み重ねます。
- 数列と級数: 数列の収束や発散を考えるために極限が利用されます。
まとめ
極限は、関数や数列の挙動を理解するための基礎的な概念です。微積分学では、極限を使って連続性、微分、積分などを定義するため、この概念をしっかりと理解することが重要です。上記の例題を通じて、極限計算の基礎を学んでいきましょう。
無限大と無限小の概念
無限大と無限小は、数学において非常に重要な概念であり、特に極限や解析学の分野で頻繁に登場します。これらの概念は、関数の挙動や数列、級数などを理解する上で欠かせません。ここでは、無限大と無限小について詳しく解説します。
1. 無限大の概念
無限大(∞
)は、数が限りなく大きくなる様子を表す数学的な記号です。無限大という概念は、物理的な「無限」や「終わりのない量」を表現するために使われますが、実際には数値そのものではなく、ある量がどんどん大きくなる様子を示します。
無限大は、通常以下のような状況で使用されます:
- 無限に大きい数:例えば、
limx→∞ f(x)
のように、x が無限大に近づくときの関数の挙動を示します。無限大はあくまで「無限に大きくなる」という状態を表します。 - 無限大の無限小との比較:無限大と無限小は対照的な概念であり、極限を使って両者を比較したり、相対的な大きさを評価したりします。
無限大を使った例として、次のような極限があります:
例: limx→∞ 2x
ここで、x が無限大に近づくと、2x はどんどん大きくなります。したがって、この極限は無限大に発散します:
limx→∞ 2x = ∞
このように、無限大は数が限りなく大きくなるときに使われる概念です。
2. 無限小の概念
無限小(0
に近づく値)とは、数が限りなく小さくなる様子を示す概念です。具体的には、無限小は「0に非常に近いが、0ではない」といった状況を表します。無限小は、極限の計算でよく登場します。
無限小は、次のような状況で使われます:
- 無限小の挙動:例えば、
limx→0 f(x)
のように、x が0に近づくとき、関数の値がどのように振る舞うかを調べます。無限小は「0に近いが、0にはならない」という状態を示します。 - 微小な変化:微積分学では、無限小を使って関数の微分を定義します。例えば、f(x) の変化を無限小の変化量 dx を使って表現します。
無限小を使った例として、次のような極限があります:
例: limx→0 (sin(x) / x)
この極限では、x が0に近づくとき、sin(x) / x の値がどのように振る舞うかを調べます。結果として、この極限は1に収束します:
limx→0 (sin(x) / x) = 1
このように、無限小は「0に限りなく近づく値」を示し、微積分において重要な役割を果たします。
3. 無限大と無限小の関係
無限大と無限小は、数学的に対照的な概念です。無限大は「数が無限に大きくなること」を示し、無限小は「数が0に近づくこと」を示します。
これらの概念は、極限を使って比較したり、相対的に評価することができます。例えば、ある関数の極限が無限大に発散する場合、その関数は「無限大に近づいていく」と言えます。一方、極限が0に収束する場合、その関数は「無限小に近づく」と言います。
無限大と無限小は、微積分学において以下のように使われます:
- 無限大の場合: 関数が無限大に収束する場合、その関数の値は非常に大きくなるため、実際の計算や解釈では「無限大」として扱います。
- 無限小の場合: 関数が無限小に収束する場合、その関数の値は非常に小さくなり、0に近づいていきます。
4. 無限大と無限小の応用
無限大と無限小は、数学の多くの分野で使用されます。以下はその代表的な応用例です:
- 微積分学:無限小を使って微分の定義を行います。微分は、関数が無限小の変化量に対してどれだけ変化するかを調べる手法です。
- 極限:無限大と無限小を使って関数の極限を求めます。極限を使って、無限大に発散する関数や、0に収束する関数の挙動を理解します。
- 数列の収束:数列が無限大に発散する場合や、無限小に収束する場合の分析に無限大と無限小を使います。
5. 無限大と無限小を扱う際の注意点
無限大や無限小は実数として扱うことができません。これらはあくまで極限の概念であり、実際の計算では具体的な数値として取り扱うことはありません。また、無限大や無限小を扱う際には、極限の計算方法や関数の挙動を正確に理解しておく必要があります。
無限大や無限小は、数学における「抽象的な概念」として扱われるため、具体的な数値計算に直接使用するのではなく、極限を通じてその性質を理解することが重要です。
まとめ
無限大と無限小は、極限を理解するための基礎的な概念です。無限大は「無限に大きくなること」、無限小は「無限に小さくなること」を示し、微積分や数列、級数、関数の挙動を理解するために不可欠です。これらの概念をしっかりと理解することが、数学の深い理解に繋がります。
無限大(Infinity, ∞)
無限大は、数が限りなく大きくなる様子を表現するための数学的な記号です。無限大自体は具体的な数値ではなく、極限や発散の過程を示すために使います。
- 無限大の定義
無限大(∞
)は、数がいくらでも大きくなることを意味します。実際の数値として無限大を扱うことはできませんが、数が「どんどん大きくなる」状態を示すのに使います。
例えば、関数 f(x) = x の場合、x が大きくなる(無限大に近づく)につれて、関数の値 f(x) は無限大に向かって増加します。これを次のように表現できます:
limx→∞ x = ∞
- 無限大の使われ方
無限大は以下のようなケースで用いられます。
極限: 無限大は、極限を扱う際によく使われます。例えば、関数が無限大に発散する場合、それは「無限大に近づいていく」と解釈されます。
例: lim<sub>x→∞</sub> (2x + 5) = ∞
無限大の比率: 数式の中で無限大を含む比率や関数の挙動を評価するために使います。
例: lim<sub>x→∞</sub> (1/x) = 0
このように、無限大に向かう関数は場合によっては0に収束することもあります。
- 無限大を扱う際の注意点
無限大は数そのものではなく、極限の概念に過ぎません。よって、無限大を加算や減算、乗算で使う際には特別な注意が必要です。
例えば、無限大同士の加算や乗算は、通常の計算と異なり、「無限大」そのものとして結果が示されます。
∞ + ∞ = ∞
∞ × 5 = ∞
∞ / ∞
は未定義。場合によっては「不定形」と呼ばれ、極限を使って詳しく解析する必要があります。
無限小(Infinitesimal, 0に限りなく近い)
無限小は、数が0に限りなく近づく様子を示す概念です。無限小もまた、実際の数値ではなく、極限のプロセスを示すために使います。
- 無限小の定義
無限小は、数学的に「0に非常に近いが、0ではない」状態を示します。無限小は極限の計算において重要な役割を果たします。
例えば、x が0に近づくとき、関数の値がどのように変化するかを調べるために無限小を用います。
例: lim<sub>x→0</sub> (sin(x) / x) = 1
- 無限小の使われ方
無限小は、微積分学において非常に多く利用されます。微分や積分では、関数の変化量を無限小で近似する方法を取ります。
微分の定義: 微分は無限小の変化量を使って関数の変化率を求める方法です。例えば、関数の微分は次のように定義されます:
f'(x) = limh→0 (f(x+h) - f(x)) / h
ここで、h は無限小の変化量を表します。
積分の定義: 積分では、面積を無限に小さな長方形の面積の合計として近似します。例えば、定積分は次のように無限小の幅で近似されます:
∫ab f(x) dx = limΔx→0 Σ f(xi) Δx
- 無限小の応用
無限小は、微積分や解析学において幅広く応用されます。無限小を使うことで、非常に小さな変化を扱い、関数の詳細な挙動を分析できます。
関数の近似: 微分法を用いることで、関数を無限小の変化量で近似し、その傾きや挙動を計算することができます。
テイラー展開: 無限小の概念は、関数を多項式で近似するテイラー展開にも使われます。テイラー展開では、関数の値を無限小の変化量を基に近似します。
無限大と無限小の関係
無限大と無限小は、数学的に対照的な概念です。無限大は「数が無限に大きくなる」という状態を示し、無限小は「数が0に限りなく近づく」という状態を示します。しかし、これらは極限を使って関連付けることができます。
無限小は無限大の逆: 無限小と無限大は、互いに逆の概念と捉えることができます。例えば、lim<sub>x→∞</sub> (1/x) = 0
といった場合、無限大に向かうと、無限小に収束するという関係があります。
極限の形: 無限大や無限小は極限の計算でしばしば組み合わされます。例えば、lim<sub>x→∞</sub> (1/x²)
のような関数では、無限大に近づくと無限小に収束することがわかります。
無限大と無限小を使った応用例
無限大と無限小は、微積分学をはじめとする多くの数学的な分野で応用されます。具体的には以下のような応用が挙げられます:
微分: 微分では、無限小の変化量を使って関数の変化率を求めます。無限小は関数の局所的な挙動を詳細に理解するために使われます。
積分: 積分では、無限小の幅を使って面積を求めます。無限小は面積を求める際に、区間を無限に小さな部分に分割するために使われます。
極限計算: 極限の計算では、無限大や無限小を使って関数の挙動を評価します。無限大に発散する関数や、無限小に収束する関数の性質を調べるために使われます。
数列と級数: 数列が無限大に発散するか、無限小に収束するかを調べる際に無限大や無限小を利用します。
無限大と無限小
無限大(∞
)と無限小(0
に近づく値)の極限計算に関する例題を解いてみましょう。これらの問題を通じて、極限の基本的な理解を深めることができます。
1. 無限大に関する例題
例題1: 無限大に向かう一次関数の極限
問題: limx→∞ (3x + 2)
を求めなさい。
解答: この関数は一次関数で、x が無限大に近づくと、3x の項が支配的になります。したがって、極限は無限大に発散します。
limx→∞ (3x + 2) = ∞
結論として、この関数はx が無限大に近づくと無限大に発散します。
例題2: 無限大に向かう分数関数の極限
問題: limx→∞ (5 / x)
を求めなさい。
解答: ここでは、分母のxが無限大に近づくので、5 / x は無限小に収束します。したがって、この極限は0です。
limx→∞ (5 / x) = 0
結論として、x が無限大に近づくと、5 / x は0に収束します。
2. 無限小に関する例題
例題3: 無限小に向かう三角関数の極限
問題: limx→0 (sin(x) / x)
を求めなさい。
解答: この極限は三角関数の基本的な極限です。数値的には、x が0に近づくとき、sin(x) / x の値は1に収束します。
limx→0 (sin(x) / x) = 1
この極限は微積分における非常に重要な定理であり、微分の定義にも利用されます。
例題4: 無限小に向かう分数関数の極限
問題: limx→0 (x / (x² + 1))
を求めなさい。
解答: この関数では、x が0に近づくとき、分子のxは無限小に近づきます。一方、分母は1に収束します。したがって、この極限は0です。
limx→0 (x / (x² + 1)) = 0
結論として、x が0に近づくと、この関数は0に収束します。
3. 無限大と無限小の交差する場合の例題
例題5: 無限大と無限小の交差を含む極限
問題: limx→∞ (1 / x²)
を求めなさい。
解答: この場合、分母の x² が無限大に向かって増加します。したがって、1 / x² は無限小に収束します。
limx→∞ (1 / x²) = 0
結論として、x が無限大に近づくと、1 / x² は0に収束します。
例題6: 高次関数の極限
問題: limx→0 (x³ / (x + 1))
を求めなさい。
解答: この場合、x が0に近づくと、分子の x³ は無限小に収束し、分母の x + 1 は1に収束します。したがって、この極限は0です。
limx→0 (x³ / (x + 1)) = 0
結論として、x が0に近づくと、この関数は0に収束します。
4. 無限大と無限小を使った応用問題
例題7: 無限大と無限小を含む複雑な関数の極限
問題: limx→∞ (x³ - 4x² + 5x) / (2x³ + x²)
を求めなさい。
解答: この関数を簡単にするために、分子と分母を x³ で割ります:
limx→∞ (1 - 4/x + 5/x²) / (2 + 1/x)
ここで、x が無限大に近づくと、分母と分子の全ての項で x が無限大に近づくので、無限小の項は0に収束します。したがって、この極限は次のようになります:
limx→∞ (1 / 2) = 1/2
結論として、この極限は 1/2
です。
まとめ
無限大と無限小は、極限を通じて数学の多くの分野で重要な役割を果たします。これらの概念をしっかりと理解し、計算できるようになることで、微積分学やその他の数学的な問題に対応できるようになります。これらの問題を解くことで、極限の計算方法をマスターしましょう。
極限の計算方法
極限の計算方法は、関数が特定の値に近づくときの挙動を求めるための基本的な手法です。特に、極限を計算するための定理や性質は、数学や微積分学において非常に重要です。以下では、極限の計算方法に関する定理や性質を詳しく解説します。
- 極限の計算方法
極限を計算するための基本的な方法として、直接代入、因数分解、分母の有理化などがあります。また、極限を計算するための強力なツールとして定理や性質があります。
1.1 直接代入法
最も簡単な方法は、関数における変数の値(例えば、x → a のとき)をそのまま代入する方法です。もし関数が連続であれば、この方法で極限値を得ることができます。
例:
lim
𝑥
→
2
(
3
𝑥
+
4
)
3
(
2
)
+
4
6
+
4
10
lim
x→2
(3x+4)=3(2)+4=6+4=10
これは、関数が連続していて、特別な計算を必要としない場合です。
1.2 因数分解法
極限の計算で不定形(例えば 0/0 など)が出る場合、関数を因数分解して、共通の因子を約分する方法を使います。
例:
lim
𝑥
→
2
𝑥
2
−
4
𝑥
−
2
lim
x→2
x−2
x
2
−4
この場合、分子の
𝑥
2
−
4
x
2
−4 は因数分解できます:
𝑥
2
−
4
(
𝑥
−
2
)
(
𝑥
+
2
)
x
2
−4=(x−2)(x+2) これを使って、極限を計算します:
lim
𝑥
→
2
(
𝑥
−
2
)
(
𝑥
+
2
)
𝑥
−
2
lim
𝑥
→
2
(
𝑥
+
2
)
4
lim
x→2
x−2
(x−2)(x+2)
=lim
x→2
(x+2)=4
1.3 分母の有理化法
無理数の極限の場合、分母に無理数が含まれるときは、有理化して計算を簡単にすることがあります。
例:
lim
𝑥
→
1
𝑥
−
1
𝑥
−
1
lim
x→1
x−1
x
−1
この場合、分母と分子に共役式
𝑥
+
1
x
+1 を掛けて、有理化します:
𝑥
−
1
𝑥
−
1
⋅
𝑥
+
1
𝑥
+
1
𝑥
−
1
(
𝑥
−
1
)
(
𝑥
+
1
)
x−1
x
−1
⋅
x
+1
x
+1
=
(x−1)(
x
+1)
x−1
これを約分すると、極限が計算できます:
lim
𝑥
→
1
1
𝑥
+
1
1
2
lim
x→1
x
+1
1
=
2
1
- 極限の定理と性質
極限を計算するために、以下の定理や性質を活用することができます。
2.1 極限の加法定理
極限の加法定理は、関数の極限を個別に計算し、その結果を加算することができるという性質です。
定理:
lim
𝑥
→
𝑎
[
𝑓
(
𝑥
)
+
𝑔
(
𝑥
)
]
lim
𝑥
→
𝑎
𝑓
(
𝑥
)
+
lim
𝑥
→
𝑎
𝑔
(
𝑥
)
lim
x→a
[f(x)+g(x)]=lim
x→a
f(x)+lim
x→a
g(x)
例:
lim
𝑥
→
2
(
𝑥
2
+
3
𝑥
)
lim
𝑥
→
2
𝑥
2
+
lim
𝑥
→
2
3
𝑥
4
+
6
10
lim
x→2
(x
2
+3x)=lim
x→2
x
2
+lim
x→2
3x=4+6=10
2.2 極限の積法則
積法則では、関数の積の極限を個別に計算して、その結果を掛け算することができます。
定理:
lim
𝑥
→
𝑎
[
𝑓
(
𝑥
)
⋅
𝑔
(
𝑥
)
]
lim
𝑥
→
𝑎
𝑓
(
𝑥
)
⋅
lim
𝑥
→
𝑎
𝑔
(
𝑥
)
lim
x→a
[f(x)⋅g(x)]=lim
x→a
f(x)⋅lim
x→a
g(x)
例:
lim
𝑥
→
2
(
𝑥
2
⋅
3
𝑥
)
lim
𝑥
→
2
𝑥
2
⋅
lim
𝑥
→
2
3
𝑥
4
⋅
6
24
lim
x→2
(x
2
⋅3x)=lim
x→2
x
2
⋅lim
x→2
3x=4⋅6=24
2.3 極限の商法則
商法則は、関数の商の極限を計算するための定理です。分母が0でない場合に使用できます。
定理:
lim
𝑥
→
𝑎
[
𝑓
(
𝑥
)
𝑔
(
𝑥
)
]
lim
𝑥
→
𝑎
𝑓
(
𝑥
)
lim
𝑥
→
𝑎
𝑔
(
𝑥
)
(ただし、
lim
𝑥
→
𝑎
𝑔
(
𝑥
)
≠
0
)
lim
x→a
[
g(x)
f(x)
]=
lim
x→a
g(x)
lim
x→a
f(x)
(ただし、lim
x→a
g(x)
=0)
例:
lim
𝑥
→
2
𝑥
2
−
4
𝑥
−
2
lim
𝑥
→
2
(
𝑥
2
−
4
)
lim
𝑥
→
2
(
𝑥
−
2
)
4
−
4
2
−
2
不定形
lim
x→2
x−2
x
2
−4
=
lim
x→2
(x−2)
lim
x→2
(x
2
−4)
=
2−2
4−4
=不定形
これは不定形であるため、因数分解などの他の方法を使う必要があります。
2.4 積分法則
極限と積分を組み合わせて使う場合、極限を積分に関して適用することができます。
定理:
積分の極限に関して、次のように計算できます:
lim
𝑛
→
∞
∫
𝑎
𝑏
𝑓
𝑛
(
𝑥
)
𝑑
𝑥
∫
𝑎
𝑏
lim
𝑛
→
∞
𝑓
𝑛
(
𝑥
)
𝑑
𝑥
(積分と極限が交換可能な場合)
lim
n→∞
∫
a
b
f
n
(x)dx=∫
a
b
lim
n→∞
f
n
(x)dx(積分と極限が交換可能な場合)
2.5 ライプニッツの法則
微分の極限計算において、ライプニッツの法則を使用することができます。
定理:
𝑑
𝑑
𝑥
[
lim
ℎ
→
0
𝑓
(
𝑥
+
ℎ
)
−
𝑓
(
𝑥
)
ℎ
]
𝑓
′
(
𝑥
)
dx
d
[lim
h→0
h
f(x+h)−f(x)
]=f
′
(x) これは微分を定義する際に使われる定理です。
- 極限の不定形
極限計算では、いくつかの「不定形」な状況が出てきます。代表的なものは以下の通りです:
0/0 型の不定形: 例: lim<sub>x→a</sub> (x² - 4) / (x - 2)
など。この場合は、因数分解やラピタルの法則などを使って解決します。
∞/∞ 型の不定形: 例: lim<sub>x→∞</sub> (x² - 4) / (x - 2)
など。ラピタルの法則を使うことがよくあります。
∞ – ∞ 型の不定形: 例: lim<sub>x→∞</sub> (x - (x + 1))
など。このような場合も、差を計算してみたり、ラピタルの法則を使ったりします。
0 × ∞ 型の不定形: 例: lim<sub>x→0</sub> x × ln(x)
など。このような場合も、変数の置き換えやラピタルの法則を利用します。
0^0, ∞^0, 1^∞ 型の不定形: これらの形が出る場合、変数変換やログを取ることで解決します。
- まとめ
極限の計算方法は、数学や微積分学において非常に重要なテクニックです。以下のポイントを押さえておくと、極限計算がスムーズに行えます:
直接代入法:簡単な関数の場合に直接計算。
因数分解法:不定形の場合は因数分解で解決。
分母の有理化法:無理数を含む場合は有理化する。
極限の定理と性質:加法、積法、商法則を利用して計算。
不定形の扱い:不定形に遭遇した場合はラピタルの法則や因数分解を使用。
これらの方法を使いこなすことで、複雑な極限の計算も容易に行うことができるようになります。
一変数・多変数関数の微分と積分
極限、連続性
偏微分、全微分
重積分(線積分、面積分、体積積分)
ベクトル解析(勾配・発散・回転、ストークスの定理、ガウスの発散定理)
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